「君に会いたいな」
正月、田舎に帰ったら、君にばったり会いたいな。
駅のホームで会いたいな。散歩の途中で会いたいな。
お化粧している君を、一度見てみたいな。
スーパーマーケットで会いたいな。初詣で会いたいな。
だけど、なかなか会えないもんだね。こんなに小さな街なのに
山田のおばさんには、毎回会えるのにさ。
明日はばったり会いたいな、どこでもいいから会いたいな。
君に幸せな家族ができていたら、ちょっとショックだけど、やっぱり会いたいな。
そしたら君のだんなさまに、いかにも冗談を言うように
「僕の初恋の人なんです!」と長年の思いを言っちゃいたいな。
だけどなかなか会えないもんだね。こんなに散歩ばかりしているのに
床屋のおじさんには、簡単に会えるのにさ。
明日、僕が働く遠くの街に帰ったら、どんなに、どんなに散歩をしても
君には絶対会えないんだろうな。
学生時代は、ばったりと出会えたことを思い出し
ひたすら、ひたすら散歩して、やっと出会えたのは君のお母さん。
やっぱり、なかなか会えないもんだね。こんなにお使いも引き受けているのに
太った野良猫には、必ず会えるのにさ。
だけど、なかなか会えないもんだね。こんなに小さな街なのに
山田のおばさんには、さっきも会えたのにさ。